今日の林原(カバヤ)の工場【8月21日】 [廃墟]

先日お伝えしました、岡山駅前にある林原(カバヤ)の工場ですが、
先週末から足場が組まれ始め、
本日8月21日の夕方の状態は、このようなかんじです。
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足場が完成して、周囲がシートで覆われてしまうと、
解体作業の開始だと思います。
工場の外観を見ることができるのも、あと数日のことではないかと思われます。
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今日も日が暮れてゆきます。
嗚呼、ほんとにもうじきお別れなんですね・・・。
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今日の夕焼け、キレイだった。
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たくさんの窓ガラスが夕焼け空を映しています。
空を映したり、雲を映したり。
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角度に微妙なばらつきがあって、
一枚一枚が微妙に違う色をしていて、
モザイクのようでとても美しいですね。


大きなガラス窓を作ることが難しかった頃の建築では、
小さなガラスを並べて大きな窓にしていた、
そういう時代を映しているのです。


もし全て同じ質のものが並んでいたら、
それはそれで統一感があって美しいと思いますが、
画一化されてないっていうことだって、
こんなに美しいと思わせる力がありますね。
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杉が植林された山には、
同一形状の木が並ぶパターンの美しさがありますが、
自然のままのいろんな種類の木々が生い茂る山々には、
「異質なものの存在を許せる懐の深さ」を思わせ、
なぜか豊かな気持ちにさせてくれるものなんです。
そんなことを思いながら、暗くなるまで黄昏色の窓を眺めていました。

一枚一枚個性を持ったガラスたちが、
いろんな色の空を映してキラキラ光っている様子は、
なぜか心にキュンとくるのです。
この光景も、あと少しで過去のものになってしまうんだと思うと、
さらにこみ上げてくるものがありますね。





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本当は、ピカピカに輝いていた現役時代の工場を
しっかり撮っておくべきでしたが、私は撮っていません。
壊される直前になって焦って足繁く通っています。
私にはもう、「今できること=撮ること」 をするしかありません。 
最後までちゃんと見届けてあげないとなぁ。




ここのところ、この工場を撮るために、何度か通っているのですが、
周囲は人通りが多く、
「このおっさんはカメラ持って
なにしょんなら!(岡山弁・・・なにをしているのか!という意味)」
的な視線で見られている気がしてなりません。

この段階になっても、この工場に目を向けている人は全くいません。
あと少しで、この愛おしい光景が永遠に失われてしまうというのに、
長年、この岡山の玄関口に建っていたというのに、
なぜ誰も目を向けないのでしょうか?

そのことに気づいていないのでしょうか、
失われてからでないと気が付かないのでしょうか?
それとも感心が無いのでしょうか?
あるいは逆に汚いものとして嫌っているのでしょうか・・・?

やはり私という人間は、この人間社会の中では異端なのでしょうか・・・?





そして、日の暮れた工場。
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周囲の建物に明かりが灯るけれど、
もうこの工場に明かりは灯ることはないんです・・・。



おやすみ、林原(カバヤ)の工場!


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コメント 4

HS

林原の写真よいですね。私も岡山人なのですが岡山の空を思い出します。関東の雲は平野のせいか流れてしまって固まらないんですね。新幹線から見えていた林原の建物は、役割を終えて時とともに流れ去っていくのですね。

我々が生きる時間はとても短くて、我々にとってとても大切なものも、実際は次の時代には忘れ去られてしまうくらいちっぽけなものなのでしょうけど、岡山史の一つの区切りを岡山の空とともに切り取った一幡さんのお仕事はそのちっぽけな世界の中に様々なロマンを想像させるきっかけになりそうです。ミクロなコスモスがこの写真の中に広がって。

廃墟ってそこにいろいろなロマンがあったことを彷彿させますね。それは他人事ではなくて、今は廃墟とは無関係な我々の日常もいつの日にか必ず廃れて廃墟になるのだと。そして私自身も。

これからも一幡さんの感性をとり続けてくださいね。応援しています。
by HS (2012-08-22 14:53) 

浅葱

何を言われるんですか!
異端なんて、決してそんな事はありませんよ。
形あるものって、いつかは消えて無くなってしまうのがその運命です。
でも多分、ほとんどの人は無くなってしまってから初めて気がつくのだと思います。
無くなってしまう前に目を向けることのできるイチマンネットさんは
多分、周りの人より色んな事に目配りが出来る方なんだと
私は思います。

私自身について言えば、
今は無くなってしまった建物に関しての記憶が半端ないです。
小さい頃住んでいた家、
木造だった小学校の校舎(取り壊されました)、
中学・高校の校舎(建て替えられました)などは、
今でもまるで目の前にあるかのようにありありと思い出せます。
その中を歩いている自分を現実のことのように思い浮かべることもできます。
でも写真として形に残せても良かったかなぁ。。
とも思います。

イチマンネットさん、これからも楽しみにしています。
by 浅葱 (2012-08-22 18:26) 

ichimannet

HSさん
返信遅くなりましてすいません。
とても感慨深くて、雄大な想像をかきたてるコメントをありがとうございます。

東京と岡山とでは、地形の違いによって雲の出方が変わり、夕焼け空の見え方も違うなんて、このたび初めて気付かされました。
日本全国どこでもその時々の美しい夕焼けが見られるのだと思っていましたので、少々驚きました。
ここのところ岡山は晴れの日が多く、毎日のようにきれいな夕焼けが見られます。

林原の工場は著名な建造物でもなく、このまま時代の流れの中に埋もれていってしまいそうですね。
この風景に思い入れはなくすぐに忘れてしまう人も多いと思いますが、記憶の隅に留め、いつの日にか懐かしく思い出す岡山人も多いだろうと思います。

「ミクロなコスモス」、こんな素敵な言葉を頂戴してとても嬉しいです。
長大な時間の流れの中に、ほんのひとときだけ生まれ死ぬ人々。
ちっぽけな人のみが歴史を作り出すことができ、いろんなものが次の世代へと受け継がれてゆきます。
人は次々と生まれては死んでいきますが、まちやものがずっと残ってゆくことだってあります。
思いを語り継ぐ人がいなくなっても、残されたものたちがその思いを語ってゆくのだと思います。
それに触れたくて、自分で解釈したくて、私は写真を撮っているようなものだと思います。

ご自身を廃墟になぞらえるとは少々驚きましたが、よく考えてみると確かにそのとおりですね。
我々も歴史の一部ですから、我々の人生が終わった後に、何かを残すことができたなら、まさに我々は“廃墟”になるわけですね。
よい意味で何か後世に伝えられたら、素敵な人生だったと言えるだろうと思います。

ほんとにありがとうございます!
今後も私の思うままを撮り続けたいと思います。
by ichimannet (2012-08-26 16:34) 

ichimannet

浅葱さん
返信遅くなりましてすいません。
どうもありがとうございます!

私が周りの人より目配りが出来ているかどうかはわかりませんが、大変恐縮であります…(汗
「異端」というのはこの工場の件に限らず、普段、私自身がそう感じることが多いのであります。
他人と接する機会に、自分だけいろいろと感覚が違うことを認識することが多いのです。
まぁこれも「個性」なのだと言ってしまえばそうなりますでしょうか。

それから、これは私という人間が閉鎖的であり、昔からあるものには馴染んでいるけど、新しいものをなかなか受け入れられないという性質も関係しているのだと思います。
ここに新しくできる「イオンモール」よりも消えてゆく工場のほうに親しみを持っています。

浅葱さんは写真ではなくご自身の記憶に留めておかれるとのこと。
もう失われてしまったものを現実のように思い浮かべられるなんて、すごいじゃないですか!
その建物に思い入れがあったり、好きな場所だったりするからでしょうか?

私なども覚えていることもありますが、臨場感のある記憶と言うよりは、ボヤケ気味のふんわりとしたイメージとしてしか残っていません。

もう失ってしまったものは記憶に留めておけるならもちろん良いのですが、写真にも残しておけば、後で見た時にいろいろなことを思い出すことができると思います。
写真からはその時代の息吹きや空気感も鮮明に伝わってくると思います。
また写真は視覚的なものですから、他の人に見せることができ、思い出を共有することができると思います。

関係ないかもしれませんが、私は江戸時代以前の歴史にはあまり感心がないのですが、明治以降については親しみを持っています。
それは「写真」が残っていることが大きいと思われます。
私個人の誠に勝手な見方ですが、明治期以降の人々は私たちの直接の先祖で同じ日本人だと感じていますが、江戸以前の方々ってどんな方だったのか、どんな暮らしをしていたのか、なぜかイメージが湧いてこないのです。

話がそれましたが、私は写真というものを「自分が忘れたくないもの」を残すことに使っているということを今回再認識しました。

またこれからもよろしくお願いします!
by ichimannet (2012-08-26 16:36) 

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