2010 九州その④ (佐賀~長崎) [廃墟]

2010 九州その① (福岡~大分)

2010 九州その② (宮崎)

2010 九州その③ (鹿児島)    の続きです。

 

旅もとうとう終盤に差し掛かりました。

鹿児島からは高速道路で一気に走って、

佐賀県の伊万里市までやってきました。

「川南工業浦之崎造船所(通称:川南造船所)」を見に来たのです。

浦之崎造船所

この造船所は、戦時中に軍需工場となり、

貨物船などが作られていたそうですが、

戦争末期の頃には、人間魚雷や水上特攻艇といった

特攻兵器も作られていたそうです。

その後、閉鎖されてから半世紀以上もの間、

廃墟として存在し続けています。

 

私は5年前に一度ここを訪れました。

そのときも、この年輪を刻んだ迫力のある建築に、とても感動しました。

私が訪れたことのある廃墟の中でも、五本の指に入ると思います。

それほど気に入りました。 

 

今回再びここを訪れたのには理由があります。

それは、この造船所が来年取り壊されるらしいからです。

これは大変です。

もう見納めになるかもしれないので、とにかく行っておこうと思いました。

 

この造船所の最大の魅力。

体育館のような空間と、丸い天窓です。

体育館のような広さ

建物の室内空間と植物の融合した世界が、

なんとも心落ち着かせます。

造船所の内部は広い

いくつもの部屋があります

柱にからまる植物

 

天窓から入る光は、地面を照らしています。

眺めていると、ゆっくりと動いてるのがわかります。

丸窓からの光が地面を照らす

 

建物内各所の壁や柱には、標語が書かれています。

建物内に、残留物などはほとんどありませんが、

この標語だけが、造船所だった時代の面影をとどめています。

建物内に何箇所もある標語

 

海側に出ると、ドック跡にコンクリートの柱が並んで建っています。

さながら、ヨーロッパなどの水道橋のようでかっこいいです。

海に面したドックにある柱

 

造船所には、かれこれ4時間半もいました。

この日の佐賀県はとても暑くて、建物内は湿気が多く、

そして蚊が多かったです。

それでも休憩もせず、昼メシも喰わず、黙々と撮影に没頭していました。 

やはりこの建物、すごい魅力的でした。

 

地元の方にとっては、暗くて危なくて悪いイメージの建物でしょうが、

戦争を生き抜いてきて、そして兵器製造の一端を担っていた

この貴重な建物を、どうにか残してほしいと願います。

壊してしまっては、もう二度と取り返しがつきません。

現在、「川南造船所 全国同盟」にて、

建物は壊さず周囲を公園に整備し保存活用するよう、

行政に対して提案されています。

私も遅ればせながら署名させていただきました。

 

 

 

そして、造船所を後にした私は、長崎へと向かいました。

今回の九州で最後の目的地、私の好きな長崎県です。

もう日も傾いた頃、崎戸炭鉱跡に到着しました。

 

私はここへも5年前に訪れています。

そのとき見た、海の見える丘の上に建つアパート群の廃墟が見事で、

とても感動したものです。

しかし、この間にアパートは全て解体されてしまいました。

解体されたことは知っていましたが、なんとなくその様子を

確かめたくて、再訪した次第です。

 

 

 2005年当時のアパート群

2005年の崎戸のアパート

 

 

 2010年現在の同じ場所

2010年の崎戸のアパート跡地

 

ホントにきれいさっぱりなくなっていました・・・。

写真の左側の丘の上の、緑が少ない場所が、

建物があったことを物語っていますね。

わかっていましたが、好きだった場所がなくなっているという

明確な事実を目の当たりにし、大変ショックです・・・。

こんなに見晴らしのよい爽快な場所に建つ廃墟って、

他になかったのではないでしょうかね。

 

崎戸炭鉱跡には、その他に幾つか遺構が残っています。

広い範囲の各所に煙突が見られますが、

この2本の煙突は特徴的です。

2本の煙突

古いほうのレンガの煙突の頂上には、木が生えています。

5年前は、特に目立つような木があったとは

記憶していないのですが、

今回はこの木がとても目に付きました。

 

なんだかおもしろい光景ですね~!

だいぶ大きくなった木

こんな煙突の上に、木が育つような土があるのでしょうかね?

それとも根っこが、ずーっと煙突の底まで伸びているのでしょうか?

どちらにせよ、自然の不思議です。

 

こんな無機物の上に木が生えているという描写は、

どうしても「天空の城ラピュタ」を思い出さずにはいられませんね。

この木の形も、ラピュタの木の形に似てますぞ。

 

 

 

そして、あくる日。

大村湾沿いで迎えた朝。

まだ暗いうちに起きて、向かった先は・・・

魚雷試験場の朝

「川棚魚雷発射試験場」 であります。

朝焼けがきれい! 早起きしてよかった!

周囲は全てオレンジに染まっていました。

魚雷発射試験場跡の朝焼け

ここはその名のとおり、魚雷の発射試験をするための施設でした。

これも戦跡になります。

この建物は海の中にあり、陸続きではありません。

こんな所に建っている廃墟っていうのもめずらしいですね。

 

この建物を別の方向から狙ってみると、こんなかんじです。

移動する間に、もうすっかり日は昇ってしまいました。

魚雷試験場を遠望

海の中にポツンと佇んでいますね。

一度見たら忘れられない、印象深い建物でした。

 

ここには他にも、海の中にある塔もあります。

魚雷発射試験場跡の塔

が、しかし、ここは有名釣りスポットらしく、

早朝にもかかわらず、おおぜいの人が釣りしてましたので。

あんまし写真が撮れなかったです・・・。

 

その他、工場だった建物もあります。

k40018.JPG

じつはこの魚雷試験場、以前も来たことがあるのですが、

建物などは全く変わっていませんでした。

以前は工場の内外には、もっとたくさんの木や草が生い茂り、

さながらジャングルの中といった雰囲気でしたが、

現在はある程度手入れされているみたいで、

木も草も刈られてすっきりとしていました。

 

なので今回は軽く撮っただけに終わりました。

やはり廃墟は、ある程度植物に覆われているような雰囲気のほうが

私は好きですね。                    

 

 

この日の晩は九州で最後の晩です。

最後の晩は大好きな長崎市に泊ります。

車を走らせ、長崎市に着いた頃には、天気は下り坂でした。

長崎港

長崎市では、廃墟めぐりするのではなく、

ただ単に街を散策したかったのです。しかし雨・・・。

 

結局、たいして写真も撮らずに、多少歩き回ったりしただけで

一日が終わりました。

でも、有名な歌にあるように、長崎のまちは雨が似合いますね。

急な坂道を少し高いところまで登ると、

町全体を見渡すことができ、とても爽快でした。

雨の長崎

坂道に家々が連なる様子、私はとても大好きです。

神戸も尾道も函館といった坂の街はどこも素敵ですが、

私は長崎がいちばん美しいと思います。

山の形が複雑なので、奥行き感があるように見えます。

山々と家々が連なっている様子は、

日本庭園のように視覚的安堵感をもたらしてくれるような気がします。

坂のまち長崎

こうして、九州最後の晩は暮れていきました。

 

 

そして最終日、この日はもう帰るだけです。

長崎から小倉へと一気に走り、車を返して新幹線に乗り、

10日間に及んだ九州の旅が終わりました。

 

撮影枚数 : 3800枚

走行距離 : 約2000キロ

お疲れ様でした!

 

いろいろなところへ行きましたが、全て行ってよかった所ばかりです。

ほんとにすばらしいです九州。

産業遺産など、各地でよく保存されているところが多く、

他の地域に比べて一歩先行くといったかんじですね。

 

戦跡や各種資料館もよく充実していて、

今回まわりきれなかったところも多数あります。

ぜひまた来たいと思っています。

 

最後まで読んでくださったみなさん、どうもありがとうございます!

今回ブログに貼り付けた写真は、撮ったもののほんの一部です。

これらの写真は、今後の同人誌制作活動へと

生かしていきたいと思っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでは、とうとう最後になりましたが・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

プハァァァァァァ~~~~~~~

プハァァァァァァ~~~!!

我が家のお風呂です・・・

 

 

さらに、2010 九州その⑤ (ネコ編) へと続く

 


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コメント 10

ミムラネェ

いつも気持ちの良さそうなバスタイムの写真に
ついついお風呂につかりたくなる美邑でございます
こんにちは~(≧▽≦)ノ
自然に返りそうになっている廃墟は物語を奏でているような雰囲気で
見ごたえがあるんですね~
堪能させていただきました^^

・・・そして・・・丸坊主、お似合いですよ♪(〃∇〃人)
by ミムラネェ (2010-09-27 13:08) 

けい

煙突の上に木が!?
凄いびっくりでしたw
なんだかラピュタを思い出しちゃいました^^

そして前回の日記での
丸坊主のお姿にもびっくりでした><
by けい (2010-09-27 18:19) 

ichimannet

ミムラネェさん
私も、廃墟にはそれぞれに物語があると思います。そんないろんなことの積み重ねが、風格を漂わせているのでしょうね。
気持ちよさそうに入ってる風呂ですが、実際にはカメラをセットして、入ってすぐ出て、カメラ片付けたりと、せわしない有様でした・・・。
丸坊主、似合ってますか~! ヨカッタ。
by ichimannet (2010-09-27 20:42) 

ichimannet

けいさん
やはり、煙突の上に木って、珍しいですよね~。
これはもう直感的に、ラピュタを連想してしまいますね。
私もですが、ラピュタ好きな方って、けっこう多いのですね~。
丸坊主、びっくりさせてごめんなさい。前々から刈ろうと思っていまして、ようやく一歩踏み出せました(笑)
by ichimannet (2010-09-27 20:48) 

いつか

すべてがラピュタの世界で感激です。特に、川南造船所の建物に木がまとわりついてる感じとか。。。かつて、工場などの無機質だったイメージの場所が、時を経て自然と一体になっている…そのギャップがすごいです!!

私も川南造船所を残していただきたく、署名させていただきました。署名って今の時代インターネットでできるんですね!たった3分ほどでできちゃってびっくりです。
でも、目標が1000なのに期限が今月中で、まだ115名って…来年どうなっちゃうんだろう…とても不安です!!

川棚魚雷発射試験場の朝焼け、きれいですね!夕焼けみたいです。そこには船で渡ったりできるのですか?

ご自宅のお風呂、すごきれいですね~!どこかのセレブなホテルかと思っちゃいました。うらやましいです~!
by いつか (2010-09-27 23:10) 

ichimannet

いつかさん
川南造船所の署名して下さったんですね~。私からもお礼申し上げます。簡単に署名できるのに私も驚きました。でもほんとにあの数では厳しいかもしれないですね・・・。
川南造船所は、確かにラピュタの世界ですね~。人工物と植物との一体感。私の目で見ると、とても魅力的な建物に見えますが、やっぱり、より多くの人にとっては汚い・危ない・見苦しい存在なのかもしれません・・・。

魚雷試験場の写真は、どちらかというと夕焼けっぽくなってしましましたね~。このときは、刻々と変化する美しい空の表情を見ながら、清清しい気分で写真を撮っていました。ここへは、ゴムボートか何かの船があればたぶん渡れると思います。あるいは泳いでもすぐ渡れると思います。今度行く時は何れかの手段で渡ってみたいと思っています。

我が家の風呂、セレブなホテルですかっ!? それはちょっと褒めすぎですよ(笑) 一人暮らしのおっさんの風呂にしては不似合なのかもしれませんが、改装後15年ぐらい経ってるし、写真に写ってない部分にはカビが多いですよ・・・。
by ichimannet (2010-09-28 20:25) 

teru

見慣れた景色ばかりでなんか嬉しくてほっとします(^^
川棚の魚雷発射試験場の朝いいですね~!!
せっかくの機会だったので、できればご一緒させて頂きたかったのですが都合がつきませんでした(^^;
またの機会を期待します(^^
by teru (2010-09-29 08:09) 

ichimannet

teruさん
お仕事とてもお忙しいのですね~、お疲れ様です!
私もご一緒できず残念であります。
九州、また必ず行きます!
長崎・佐賀近辺はteruさんの庭のようなものですね~。魚雷発射試験場では、ドラマチックな空に会えました。早起きしてよかったです!
by ichimannet (2010-09-29 21:29) 

masami

セルフポートレイトを撮らせたらイチさんの右に出る人は居ませんね~。絶対いないと思う!
旅の最後のお風呂は一体何処?だろう~?とちょっと楽しみにしていたのです。なるほど~~自宅か~
旅が終わっても撮り続けるその貪欲さがステキ。

九州旅行シリーズ、楽しく読ませてもらいました(^^)
知覧の特攻隊員の遺書など、読んでいるこちらも涙が出ましたよ。写真も相変わらずの深みで見ごたえがありました。
特に緑、夏の緑はいいね。とっても印象的。

by masami (2010-09-30 01:45) 

ichimannet

masamiさん
長々と書きました九州の記事、読んでいただきありがとうございました! こんな稚拙な文章で涙していただけるなんて、書いてよかったと思います。
夏の緑はイイですね! でも実際には、汗だくで蚊と戦い、クモの巣にひっかかりながら、必死で撮影しています
よ・・・。やっぱり撮影ってタイヘンだぁ。もう9月も終わりですねぇ。岡山の緑はだいぶ秋の気配です。

風呂写真を楽しみにして下さって、素直に喜んでおきます! 右に出る人は居ないと評価していただきましたので、図に乗ってまたセルフポートレート撮りますね!
宿の大浴場にカメラを持って入るのは、けっこう勇気が要りましたが、また出かけた先の風呂でも写真撮りたいですね。混浴でやると逮捕されそうですが・・・。
自宅の風呂の写真は、旅が終わって家に着いてもまだ旅写真を撮ろうと考える奴なんておらんじゃろう~、とか思いながら撮ってしまいました。
by ichimannet (2010-09-30 22:40) 

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